◆大切なこと

◇はじめに

 お仕事に子育てに毎日お疲れ様です。子どもが小さいうちはまったく思い通りにいかず、また怒ってしまったと自己嫌悪。皆こういう経験をしながら子育てをしています。子育てに正解はなく、上手くいかないことが子育てでもあります。女の都こども園では保育者も保護者も協力して、悩み・助け合って子供の成長を喜び合いたいと考えています。

 

◇自然の中で五感を育てるために、本物の自然環境を子どもたちに

 全てが未発達な乳幼児期、初めて触れるもの食べるものが本物であって欲しいと願います。映像や壁に貼られた折り紙などで季節感を感じるのではなく、広大な裏山では四季折々の草花や果物、生き物に触れながら触覚、視覚、聴覚、嗅覚、味覚など全ての感覚神経を使います。加えて起伏に富んだ自然の中で全身の運動神経を使いながら創造的に遊びます。田植え・干し柿・こま・和紙など日本らしい自然や伝統に触れたり、登山や乗馬、生の演奏会などを体験します。 給食は栄養価の高い五分付き米や低農薬の野菜を使用し、化学調味料は使いません。みそ汁は本物のいりこで出汁をとります。苦手な野菜も食べれるように工夫を重ねていきます。こうしてしなやかでたくましい、一生涯の健康な体をつくります。

 

◇生きる意欲を育てるために、沢山の人に出会い、模倣やあこがれを子どもたちに

 壁のない園舎・刺激的なおもちゃの少ない保育環境の中では、興味の対象は人です。ぱっと視線を外に向けたときに人の姿が見えます。だから0歳から6歳まで沢山の仲間と濃く・深く関わります。喧嘩も話し合いもしますがクラスの仲間や小さい子の着替えや困りごとを手伝う姿もあります。また、小さいころから年長さんの姿が見え、お掃除やテーブル運び、体を使った遊び、歌など自然と模倣が始まり、年少くらいになると「年長のようになりたい!」とあこがれるようになります。年長では針と糸で雑巾を塗ったり、縄跳びを三つ編みで編んだり、竹登りや側転など一見難しい課題もありますが、あこがれがしっかりあるため最後まであきらめず集中して取り組むことができます。大人になっても自分を成長させてくれるのは他人です。他人へのあこがれこそ一生涯の生きる意欲です。

 年長になるといろんな保育園の年長児とも交流して年長さんもあこがれるように保育をしていきます。側転や跳び箱を跳びますが、できさせる保育というよりも、あの子みたいに足を延ばして綺麗に側転してみたい、縦の跳び箱に挑戦してみたいという心の成長が大切です。また、みんなが過ごす園庭をお掃除する事、困っている子に声を掛けることなど、日常の豊かな関係性の中でやさしく豊かな感性を持つようになります。

 

◇授業ではなくまるごとの生活・知識ではなく関わりあいの中で自分で考えるようになるには、、、

 私たちの園では時間割の中で勉強やスポーツなどの特定の知識や技能を大人が与えることによってではなく、自然と仲間の中で、遊ぶ、食べる、寝るという日常生活の積み重ねによって生きるための土台が育ちます。今日何して遊びたいか、どんな歌やリズムをしたいか、どこでお昼ご飯を食べたいかなど自ら考える機会が沢山あります。また、園内外のいろんな仲間と関わる中で、好き・嫌い・楽しい・嬉しい・悲しいという気持ちを知って調整できることなどこの時期に育つ力は非常に大切です。このような生きる力が育つ時期に、文字や数字、スポーツ的な型を繰り返して覚えさせるのはとてももったいないと思います。

 このように日常の中で土台の力を育てるために、保育者は日々楽しくなるように保育を考えています。一瞬一瞬の関わりの中で、子どもたちに豊かな声を掛け、子どもたちが自分で考えて自ら世界に働きかけることができるように育てていきたいと考えています。そのためには、保護者の皆様にも塾や習い事、TVやゲーム、メディアなどの子どもたちの感じる心や考える力を閉ざしてしまう刺激の強い文化の悪影響について、早起き早寝の生活習慣を整えることの大切さについて学びあっています。

 

◇みんなでみんなを保育する

 私たちは、担任が自分のクラスの子を見るという学校的な教育・保育の在り方から抜け出し、ひとりひとりについていろんな職員が関わり、いろんな子どもたちが関わりながら、多様な人間性の中で育てたいと考えています。そのためにみんなでみんなを保育すること、学び続けることを合言葉にしています。また、支援が必要な子も一緒に育てることができるよう一歩一歩積み重ねていっているところです。

 

◇一人ひとりが大切にされる社会を目指して

 年長さんと川平を散歩していると美味しそうなビワがなっていました。その家のご主人が「ビワとっていいよ、昔、自分たちもいっぱいもらって育ったから」とビワを沢山いただきました。人間は、自分を育ててくれたものを大切にして、次の世代に引き継ぐのだと直感した瞬間でした。子どもたちひとりひとりが大切にされたなら、その子たちは将来、ひとりひとりを大切にするはずです。そういう人が一人でも多くなれば、社会はもっと良くなっていくと思います。世代を超えて連鎖していくはずです。

 

 

 

学校法人女の都幼稚園 理事長 平 慶生